スガネタ。

 

   イメージ小説「Rush -惟神-」   -スガシカオ「Rush」より-


 

繁華街の片隅の雑居ビル、そこにその小さな事務所はあった。ドアにかけられた小さなプレートには「宗教法人八百万神祇会 総合宗教相談事務所」と書かれている。その、事務所内。

「神和くーん、ファックス来てるよー」

やや間延びした、低すぎない若い男の声が響く。室内はフローリングで、一応、土足禁止になっていた。作りは、手を加えれば住居になるワンフロアタイプで、移動式の壁や衝立、鉄製の書架などで、接客ブースや事務ブース、キッチンなどに仕切られていた。その、接客ブース。一応の応接セットであるソファに腰を沈め、その前のテーブルに足を乗せ、のけぞるような格好で、その男は眠っていた。天を向いた顔の上には開かれた雑誌が、目に入る光をさえぎるために載せられている。そのため、顔は見えない。けれど覗く顎は細く、白い。黒いシャツとデニムを身にまとったその人物は声に気づいていないらしい。呼吸の度に僅かに肩を上下させ、意識は華胥の国で遊んでいる様子だった。しかし、健康的な睡眠の定期的な寝息は、直後の声に乱された。

「こーなぎくーん!!朝ですよー!!

「うわぁっ」

耳の傍で大きく響いたその声に、眠っていた男は飛び起きる。ばさばさと大きな音を立てて顔を隠していた雑誌が床に落ちた。驚きの表情を浮かべたその顔は同時にその場にさらされる。やや不健康な白い頬、僅かに堀の深い鼻梁、そして、切れ長で青みを帯びた瞳。唇は、肌の不健康さを思えば悪い血色ではない。しかも、歪んでいながらも醜い印象を与えなかった。何物かに故意に作られたような整った顔は、驚きの色をたたえても、それだけは忘れないかのようだった。長く伸ばした髪を振り乱し、先ほどの安らかな寝息とは一変して、眠っていた男は驚きの形相で、直ぐ近くまで顔を寄せた声の主を見、はあはあと息を弾ませて怒鳴った。

「鼎、何しやがる!人が気持ちよく寝てる時に」

「気持ちよく寝てる時?あのね神和くん、ここは職場で、今は勤務時間なの。寝とぼけてる場合じゃないでしょ」

黒髪の耳元で大声を放った男は困ったように嘆息し、言いながら黒髪の男からその体を離した。くしゃくしゃとしたウェーヴのかかった明るい色の髪に、やや丸っこい鼻と琥珀の目の男は、黒ずくめでラフな姿の男とは対称的に、ワイシャツにネクタイ、そしてスラックスにサスペンダーといういでたちで、困った顔でソファに未だのけぞっている男を見下ろす。黒ずくめはけっ、と吐き捨てると、テーブルに置かれていたサングラスを拾い上げ、すぐさま顔を隠すようにそれを装着した。

「うるせぇ。どーせヒマなんだ、寝てるくらい、どってことないだろうが」

「確かにヒマはヒマだけどさ、君、一応ここの責任者で僕の上司なんだから、もうちょっと……」

サスペンダーの男が何やら言い始める。黒ずくめは聞く耳持たぬ、という様子で、その目の前であふあふと大きく欠伸をした。どうやら、説教も意見も無駄のようだ。まあ毎回そうだからしょうがないか。サスペンダーの男、御幣鼎は胸の中で呟き、嘆息とともに手にしていた紙片を黒ずくめの男へと突き出した。欠伸をして、伸びまでして、首を二階ほど回したところで、黒ずくめはようやくその紙片に気付き、小首をかしげながらそれを手に取った。

「何だ、こりゃ」

「今日の臨時情報。一応ここ、そういう仕事もするわけだから、君も目、通しといてよね」

御幣はそう言うと接客ブースを後にする。残された男、神和辰耶はサングラスをはずさないまま、その紙片を食い入るように見、

「連続不審死亡事件……?何でこんなのがうちと関係が……」

「ほら、もっと良く読んでよ。被害者の層がばらばらなのに、死因が八割以上心臓発作らしいって。死亡推定時刻も老若男女問わずほぼ一緒」

「午前二時から三時……」

先ほどの寝たくれていた様子とは一変して、神和は真面目な様子で紙片に見入っていた。やがて、御幣がコーヒーの入ったカップをを両手に持って接客ブースに戻ってくる。

「ただ単に心臓発作が続けて出てるってだけじゃねぇのか?」

戻った御幣を見ながら神和はその紙片をテーブルに投げた。御幣は呆れ顔で、

「だからよく読めって言ってるだろ?死因の八割は心臓発作「みたい」で、そうだとは書いてないよ。ほら、口に出して読む」

言いながらテーブルを挟んだ向かい側に腰掛け、手にしていたカップの片方を神和の前へと押し出した。神和は言われるまま今一度紙片を手にし、

「死亡直前、被害者が大声で絶叫、もしくは何かに怯えた様子……中には家族が不審な陰を目撃したり、局地的な突風もしくは地震が発生した例もあり……何だこりゃ」

言いながら、その形の良い眉根を寄せた。御幣は苦笑を漏らし、

「ま、偶然ならいいんだけどね。そうじゃないかもしれないから、って言うお達し」

「ってことは何だ、術者が調べたのか?」

御幣の言葉に、僅かに神和が目を上げる。苦笑のまま、御幣はコーヒーを口許に運び、

「うちじゃないかもしれないけど、最近こういう事件があるとすぐに「呪われてる」って言う人、多いからねぇ……世相ってヤツ?」

そう言ってから、ははは、と、呆れた様子で笑って見せた。

 

宗教法人八百万神祇会は、その名の通り宗教団体である。が、その体質は世に多くある宗教法人とはかなり異なっていた。日本古来からある宗教、神道を基盤に展開されたその組織はどちらかというと「教団」ではなく「神社の互助会」的性格であり、一応、主祭神がありそれを奉ずる神殿を持ちはするが、教義というものを特に持たず、全国各地の小さな神社のサポートや、民俗学的見地からの神道の研究など、古くからある民俗信仰の記録、保存、継承に力を入れている。法人格は半ば、その運営を円滑にするために獲得されたようなものだった。団体はまるで企業のように組織され、その部署名も神社を運営している法人のものというより、会社組織のそれに近い。

しかし彼らも一応「宗教法人」を名乗る団体である。そこからは切っても切り離せない神秘現象の対処も、他団体とは全く違ったスタイルで行われていた。本庁業務部巫覡課、それがその神秘部門の名称であり、総合宗教相談事務所は課内の地鎮係の担当部署の一つである。職務内容は宗教問題全般の相談請負。それは葬儀の手配から墓地不動産の斡旋、悪徳霊感商法への対策、地鎮、世に言う「神」なる存在との共存のための呪術的交渉まで、様々である。

「こういうのは俺等の担当じゃなくて、対処係か部長直属の特殊部隊のすることだろ」

そして事務所の二人も、その団体の地鎮係の所属、要するに霊能力者である。とは言え、部署は場末、しかもほぼ取り次ぎ窓口程度にしか稼動していないため、彼らがその現場に直接赴いてそれを実行する事は、持ち込み件数からすれば少ない。全くなし、というわけでもなかったが。

「お前もヒマだな、わざわざこんなファックス見せに来るなんざ」

ソファに腰掛けたまま、神和は目の前の御幣に言った。御幣はその言葉に何か不服なものでも感じたらしく、むっとした顔で返す。

「何言ってんの、これも仕事だよ。ここはうちの唯一の出先なんだから、類似の事件が近くで起きて、その相談が来ないとは限らないだろ?」

「来たところで、俺やお前が出張るようなことか?外注手配してはい終り、てな具合に……」

「そりゃそうだけど、そうならなかったらどうすんのさ?それに、本庁はヤバいことは全部僕らに押し付けてくるし」

あーあ、と御幣が溜め息をつく。神和はそれを見て意地悪く楽しげに、ケケケ、と声を立てて笑った。

「しょーがねーだろ、国内最強の戦闘巫覡。お前はそれだけ頼りにされてるってことだ」

「その呼び方やめてくれる?僕だって好きでこんな体質じゃないんだから。それに、人のこと言えた立場かよ?そっちは」

眉をしかめ、御幣は笑う神和に言い返した。巫覡とは、本来の意味は神道に於ける巫女、神子などを指すが、彼らの間で霊的能力を持つ人間を呼ぶ時の総称である。神和は御幣の言葉に暫し黙し、にやりと口許をゆがめて笑う。

「おう、俺様は……」

「国内一の審神者、とか言いながら、ゲロにぶの感応能力者じゃん。取り得もそっちより、その無駄に綺麗な「見てくれ」だしさー……本当に無駄だらけ」

笑いもせずに御幣が言う。神和はその言葉に、瞬間湯沸かし器の如く反応した。

「鼎、お前人の事をそんな風に思ってたのか」

「だってそうじゃん。綺麗なだけじゃお腹膨れないよ?それにさっきだって僕がフツーに、忍び足でもなきゃ気配消してたわけでもないのに、耳のそばで怒鳴るまで気が付かないなんて、どこが鋭敏な感応能力者だよ?聞いて呆れるね」

怒鳴る神和に、笑いもせず淡々と御幣は返す。ふっふっふ、とか笑いながら、神和は身を乗り出し、そんな御幣に顔を近づけて言った。

「鼎、お前とはいっぺん白黒付けたいと思ってたんだ」

「あ、そう?僕容赦しないよ?なんてったって日本で一番強い戦闘型だからねぇ。表に出ようって言うなら、その辺の覚悟もしてくれる?」

にこにこと「人のいいお兄さん」という形容以外のしようがない笑顔で御幣は憤る神和に返す。神和は黙し、しかしすぐにも、けっ、と吐き捨てるように行って、再びソファにどかりと腰を下ろした。

「本当にお前はハラの立つやつだよ!ああもう、胸糞悪い!」

「よく解ってるじゃない。でもさ、折角二人でこんなところに飛ばされて来たんだから、もうちょっと仲良くやらない?辰耶くん」

にこにこ、のままで御幣が返す。神和はそちらを一切見ないまま、

「言ってろ!この人間破壊兵器!」

「あ、そーゆー言い方しちゃう?ひどいなぁ」

御幣はその言葉に困ったような顔をしてみせる。神和はふて腐れ、ぷいと御幣からら目を逸らし、振り向こうともしなかった。

 

「ねー、いい加減機嫌直しなよー、僕も悪かったからさー」

昼。神和は事務所内の資料書架ブースに閉じこもっていた。曰く「俺はお前と違って頭脳労働の一つもこなさなきゃならない」との事だったが、へそを曲げている事は誰の目にも見て取れた。御幣は、どうにもやりにくいらしい。心底困った声で天の岩戸の如きそのドアの前、中の神和に呼びかける。

「辰耶くーん、出て来てよー」

「やかましい、お前なんか知るか」

「知るかって……こんな時にお客さんでもあったらどーすんのさー」

「お前が接客すりゃいいじゃねえか、優秀な相談員」

「そりゃそうだけど……僕がそう言う判断できないの、君知ってるでしょ」

戦闘巫覡、御幣鼎。人は彼を「神殺し」とさえ称する。御幣は攻撃的呪能には長けるが、感応能力については素人レベル以下のものしか持ち合わせていなかった。ここにその類の相談が舞い込んでも、攻撃呪能を必要とする実働意外、はっきり言って役に立たない。逆に神和は感応に長け、その存在の正体を読み解くことさえ出来る。最もこの男の場合、人間性から言って接客業に向いているタイプではないのだが。

「いい加減出てきなよ、本当に……お昼おごるからさー」

「コンビニの弁当じゃ効かんぞ」

中からは、その申し出に懐柔されそうな声が聞こえる。ドアの前、御幣の表情が解けた。にこにこと、誰が見ているわけでもないのに御幣は顔をほころばせ、

「えっ、じゃあさ、この間チラシ入ってたデリバリーのサンドイッチ屋さん呼ぼうか!僕一回あれ、とってみたかったんだー」

にこにこと上機嫌で御幣が言う。ドアは、中から開いた。開けた神和はその前でご機嫌の笑みを浮かべている御幣をサングラス越しに睨めつけ、呆れ口調で言った。

「お前、ただ単にそれがやりたかっただけだろ?俺の機嫌をとるのを口実に」

「えっ?何、神和くん、おごって欲しくないの?今日逃すともうこんな機会ないよ?チラシに初回お試し用半額チケット付いてたけど、明日で終わりだから、それ」

にこにこ、のまま御幣が言う。神和は溜め息をつき、

「俺は時々お前が解らん」

「なんで?神和くんもあそこのサンドイッチ、食べてみたいって言ってたじゃない」

小首をかしげ、御幣が言う。神和はそれ以上何も言わず、黙って御幣の横を通り抜け、事務ブースに向かって歩き出した。

 

「でもさーあれだよねー」

「……何だ、いきなり」

デリバリーのサンドイッチが届く。応接ブースにそのサンドイッチとコーヒーを持ち込み、二人は向かい合わせでやや遅い昼食をとり始めていた。小麦胚芽入り全粒粉パンのサンドイッチをほおばりながら、神和は、のんきな顔の目の前で同じものをぱくつく男に問い返した。

「さっきの、呪殺っぽい話」

「何だ、またあの話か。あんななあ……」

神和と御幣の付き合いは長い。本庁に入って以来、色々な理由から二人は組まされており、それ以前の部署からこちらに異動したのも二人一組で、の事だった。プライヴェートでもお互い「悪友」だと思っている節がある。突然御幣が何か話題を振るのは日常茶飯で、それが下らない話である事も多い。またか、とうんざりしたように神和は思って何かを言いかけ、それをさえぎったのは御幣の言葉だった。

「いや仕事のことじゃなくて、依頼する方の事」

「呪殺の、依頼人?」

言葉に、神和は首を傾げた。御幣はやや考え込むような顔になって、

「何考えてんのかなーって思ってさ。最近はお手軽で、ネットでも依頼出来たりするじゃない?だから余計に増えたり……してんのかな?」

「九分九厘以上詐欺だがな」

あっさり神和は返す。その業界では常識ではあるが、その手の依頼もその処理をする側も、本物の霊障に出くわす事は稀である。百件の相談があってそのうちの一件も霊的現象ではない事も良くある話だ。が、それでもその商売は廃れない。それは要するにその処理をする側も、同じく眉唾だということの現れである。それを行う術は確かに存在する。しかし、それが全て実行されている、とは限らない。

「その九分九厘の詐欺にでもすがって殺したいって、どういうことだろ?」

のんきに首をかしげて、およそのんきではないことを御幣が言う。神和は鼻先で笑い、

「世の中オカルトが大流行だからな。あれだ、呪殺は法で裁かれない、てのもあるんだろ」

「それもあるんだろうけど……そんなにしてまで殺したい相手なのに、他力本願、って言うのが、わかんないんだよねぇ」

真面目な顔で物騒な事を御幣が言う。神和は更に馬鹿にしたように鼻で笑い、

「そりゃ、お前みたいなやつは自力で何とでも出来るだろうが、世の中そんな器用なやつは少ないってことだ」

「……微妙に引っかかる言い方、するなぁ」

笑う神和を見、御幣がぼやく。神和はニヤニヤ笑いながら、

「俺は本当の事を言ったまでだぜ。『神殺し』」

「まあ……そうなのかもしれないけどさ」

ぶう、と、不服ながらもそれに納得している部分のある御幣が膨れる。が、すぐにも御幣は吐息した。そして、またどこか真面目な、怪訝そうな顔になり、首を傾げて言った。

「遠まわしにでも殺したい相手、かぁ……神和くんは、そういう人、いる?」

「……何だ、藪から棒に」

今度は神和が眉をしかめる。御幣は困ったように笑って、

「僕はそういう人、いないからさ。どんなカンジなのかなーって……」

「あいにく、俺だってそうだ。それに、そんな面倒な事してみろ、逆凪があるだろうが」

けっ、と神和が吐き捨てる。みて、御幣は苦笑を漏らした。人を呪わば穴二つ、という言葉がある。呪法は、それを行った側にも何かしらの影響を与えるものだ。人を貶めたならそれだけの、殺したなら同じだけのものが、呪った人間だけでなく、依頼した側にも返ってくる。それを知る人間に、それを行うものはいないだろう。最も、それさえ厭わないほどの何かがあれば話は別だが。

「だよねぇ……怖いもんね、逆凪」

「安心しろ、お前はそいつもぶった切って有り余る戦闘巫覡加減だ。ま、遠くから誰かを殺す、なんて遠回りな芸は出来ないだろうがな」

御幣の言葉の後、ケケケ、と神和が笑う。とたんに御幣はむっとして、

「何それ、ひどい言い方。僕だって好きでこんな体質じゃないっていつも言ってるだろ?」

「お、ワリぃワリぃ。つい本当の事言っちまう正直な口なんでな」

「人に昼飯おごられてるくせにそういう口の利き方すんの?質悪いなぁ」

「別に頼んだわけじゃない。お前がデリバリーとってみたかっただけだろ?俺はその口実だ」

「……そうだけどさ」

睨まれてもどこ吹く風、の様子で神和が言う。御幣は意気消沈して、どうしようもないように溜め息をついた。やり込められて気分のいい神和は、そんな彼を上の立場から、哀れむように言った。

「ま、俺にもし殺したいやつができたら、他人になんか頼まないけどな。自分の手でやれないで、恨みなんか晴らせないだろうしよ?」

「あ、僕もそれ、同感。大体、法で裁けませんっていうのに守られてるなんて、中途半端だし解せないよねー。ハイリスクハイリターン、だよ」

御幣と神和の目が合う。お互いに小気味よさげにニヤリと笑い、

「お、気が合うな、相棒」

「まーね、相棒だしね」

くすくすと御幣が笑い出す。神和は着ていた上着のポケットからタバコを取り出し、それに火をつけようとする。が、そこで御幣の顔が一変した。

「神和くん、ここ、禁煙」

「……うるせーな、昼時の一服だぞ。いーじゃねーか誰もいねーんだし」

「ダメだよ!ここは禁煙!」

言いながら御幣がそのタバコを奪い取る。神和は、それを見て忌々しげに言った。

「御幣……時々俺はお前を殺したくなるぞ」

「あ、そう?奇遇だね、僕も時々君のこと、勢いで殺したくなったりするよ」

奪い取ったタバコを手で握りつぶしながら、御幣が笑う。上機嫌だった神和の心中は一瞬で不機嫌に変わり、その顔つきもすぐに歪んだ。

「ほら、サンドイッチまだ沢山あるよ?食べないの?勿体無い」

「うるせぇ、俺はお前みたいなのと違ってお上品なんだよ!馬みたいに勢いだけで食えるか」

機嫌をとろうとするあからさまな御幣の言葉に神和は忌々しげに言い放つ。御幣、聞くなり顔色を変え、

「馬?僕が馬?ナニソレ。ちょっと神和くん、今の言いすぎなんじゃない?」

身を乗り出してまで反論する御幣を見、神和はまたニヤニヤと笑って、

「お、まーた本当の事が口から出ちまった。ワリぃワリぃ」

ケケケ、と神和が笑った。勿論、御幣がそれに反論しないわけが無かった。

「何が正直な口だよ、タダの根性悪だろ?この間僕の取っといた冷蔵庫のプリン、黙って食べてそっぽ向いてたの、誰だよ?」

「何だお前、まだそんな事根に持ってたのか?」

「まだ?まだってまだ三日しかたってないだろ!大体あれ先週で期間が終っちゃう限定プリンだったんだよ!味見して美味しかったら五十鈴のとこ持って行こうと思ってたのに、その後君変な仕事入れちゃうし……ああもう、どうしてくれんのさ!」

「ちーせぇやつだな、お前は。そんなことくらいでいつまで腹立ててんだよ?全く」

うんざりしたように神和が溜め息をつく。御幣は目を見開き、僅かに震えながら、

「小さい?僕が小さい?もう頭に来た!今日こそ言わせて貰うけど!」

「わめくな小者。耳が痛い」

「うるさいっ。たまには黙って人の話くらい聞け!この役立たず、ぐうたら辰耶、顔だけ男!」

ソファで神和はその耳を押さえる。御幣は怒り心頭、そんな神和の襟首を捕まえて締め上げ、

「いっぺん殺してやる!」

「……おいおい、物騒だな」

その物言いにさしもの神和もやりすぎたか、と内心呟いた。そのまま長々と御幣の、ややヒステリーっぽい説教というか八つ当たりというか、正当な怒りの吐露とは思えないものが続く。そんな中、神和は呟いた。

 

「こいつ……イツカコロス……」

 

 

 

 

自分ツッコミ・……あ、言いたいこと終っちゃった()みたいな内容です。このネタは仕事中にいきなり降りてきまして「この歌でオカルトやったらおもろいなーって言うかー」と思って、多分書けば原稿用紙が三百枚分くらいになろうかと()あんまりスガさんぽくないですが、一応載せときます。そうだよそんなに殺したかったらハイリスクハイリターンだよ、人にやらせてどうすんのさ、です。あれ?なんか怖い事いいました?私。

前のページ

目次

次のページ

 

Last updated: 2006/10/09

inserted by FC2 system