つれづれにだらだら雑記

 

忘れないうちに書いておきたいです。内容じゃなくて決意(オイ)

  本当に怖い呉服屋さんの話

このままいくとこの頁が「歌舞伎トーク」になりそうだったので急遽こんなのを書いておく事にします。

いや、それだけの理由じゃないんですけども。

 

最近、というかここの所、人様の着物サイトでフィーバーしております。

楽しいです。楽しいですが。

「あーここでこれ書いたら営業妨害だなー」と思うようなネタを、

じつは持っていたりします。

タイトルがパクリっぽいのはパクリだからです。

「本当に在った怖い話・着物篇」とどっちにしようか悩んだ末、

こういう事になりました。

関係各社様……なんて別にいないですね、いいですね。

本当に在った話ですが、一応色々と伏せておきます。

趣味の個人サイトなので特別何をどうしよう、とか、

考えていませんのでそこの所は念の為ご了承をば。

って、そんな大した話でもないですが。過剰反応しちゃだめよ、ということで。

 

あれはオイラが着物にはまり始めて間もない頃でした。

まだ自分で着付けも出来ず、

自分の着物も持っていない頃……ほんの二、三年前の事です。

当時の私は着物で出かけるのに、

総て母の着物を手配して貰う、という体たらくでした。

この「貰う」辺りがポイントです。

まあ初心者なのでそこのところは仕方ないのですが。

この頃参加し始めた「着物の会」では結構カジュアルに、

ご飯を食べたりお茶をしたりしていました。

今は更に進化して何だかとてつもない企画が、

あったりなかったりなのですが(私信・ごめんねなかなか参加できなくて)

着物初心者の私には色々心配事がありました。例えば、

「おかんの着物に染み作ったらどないしょー」というのが。

他にも色々あったんですけどね。でも一番はこれでした。

他に悩みはありましたが、何よりこれでした。

何しろ、モノは全て絹。

……洗濯代も馬鹿になりゃしねぇ。

しかも出す着物出す着物「これは一度しか着てない」

「これはお母さんのおとっとき」「一番好きなやつ」と来たもんだ。

緊張しますよ、そんなの着せられたら。つーか、

自力で着られないから余計に選択の権限ないわけです。

そんなわけでこの頃の私は、

「お気楽に着られる自分の着物が欲しい」と思っていました。

当時私は自宅から車で三十分程度のところにある、

樹脂の加工会社に契約派遣社員として通っていました。

その近くにジャスコがありまして。

まあジャスコなので、フツーにテナントとして呉服屋さんが入っていたわけです。

着物ほしー、着物ほしー、と思っていた私は時々覗いておりました。

とっつかまらない程度に、遠巻きに。

何しろ相手は呉服屋です。呉服屋といえば越後屋(この辺なんか思考がおかしい)

つかまったら口八丁で何か買わされる。

そんな恐れがありました。いや、今もあります。

呉服屋さんの社員評価は、ズバリ「売り上げ」です。

元呉服屋さんの友人が言っていました。過酷だというような事を(←スマナイうろ覚え)

今も当時もそんなお金どこにもなかった私はそんなわけで、

いいなー綺麗だなーステキだなーと眺める日々でした。

そんな頃「ポリエステルの着物」というものが世の中にあることを知りまして、

これなら家で洗濯出来る上リーズナブルだという事も知り、

タイミング良くと言うか悪く、こんなのに出会ったのです。

「着物と帯、セットで7000円」(ごめんなさいここもうろ覚えです)

それでもやはり敵(?)?は呉服屋。母と相談しました。

とりあえず「その金額ならローンも親ローンもなく小遣いで買えるでしょ」というわけで、

あっさり決行は決まったわけなのですが。

其の週末、私はいそいそとそのお店にお買い物に行きました。

他のものには目もくれず。いや、そんな余裕もなく。

そして店員さんに開口一番こう言いました。

「このセットのが欲しいんですが」

敵は然る者、当然笑顔で応対してくれまして、

まあその場はあっさり着物を買って帰ったわけです。実にあっさりと。

いやそうでもなく。あっさりと帰されませんでしたが。

ここで初めて「反物を体に巻きつける」アレをしてもらいました。

反物を体に巻きつけて「よくお似合いですよー」とか言うの。

そしてやはり口説かれたのです。口説かれてもお金はないのです。

なので適当に切り上げて帰りました。

でも私はまだ気付いていませんでした。それがやつらの戦法である事に。

数日後、その呉服屋さんから一枚の葉書がやってきました。

「アンケートに答えていただいた方に抽選で着物をプレゼント!

そのお買い物の時、

まだ何も知らなかった私はそんなのをご機嫌で書いて来てしまいました。

その抽選で、何と反物が当たった、というのです。

ポリエステルだったけど。

そして電話がかかってきました。

「こちらに何時ごろに来ていただけるか、教えていただきたいのですが」

お引取りは日付が決まっていて、その時でないと物もないよ、というので、

それでも私は実はその時暇じゃなかったのですが、

何だか色々でストレスをためていたり、元々の貧乏性から

「折角タダなんだから貰わなきゃ損」とかいう、

貧乏丸出し根性が働いたりしたのでした。

母はちょっと心配そうでしたが、私と同じO型人間。

「反物だけ貰って帰ってこればいいよ」とか言われ、

その日仕事だったのでその帰りに寄ることにしました。

何をやっているか、なんて全然知らずに。

後に私はこの時の呉服屋さんの事を、

「囲い込み漁法」と呼ぶようになるのです。

そんなことすら思いもせずに。

 

この頃、当時働いていた工場はかなり忙しく、

毎日三時間の残業があって当たり前、という日々でした。

家に帰れば九時近く。疲れも溜まっています。

そんでもって土曜も仕事かよ、とか思いながら働いていました。

テンションはビミョー。

そんな感じで「でも相手は呉服屋だから」と、一応思いながら、

ちょっと様子見をしながらお店に近づきました。

何というかその、偏見があってくれて良かったと、

今でも思います。

とっ捕まったら長い。

余所の高価なお洋服を買うお店も、そうなんでしょうけど。

店に近づくと、テナントの敷地はびっしり反物で囲われていました。

ついたてに、振袖に見えるように反物がかけてあって、

それで外から中が全く見えなくしているのです。

ビミョーに防音効果もあるような、ないような。

とは言え一度目の来店もこんなカンジのディスプレイだったので、

あんまり気にせずに中を覗こうとして、躊躇。

何故って、入り口に受付があったからです。

ここは本当にジャスコのテナントか、と思いました。

二件隣には百均があるのか。(あります)

受付けでは若いおにーちゃんが着物を着て座っていまして、

電話の件を話すとはがきに書いてある担当者の名前を教えてくれ、と言われ、

実はそのおにーちゃんが担当者だったのですが、まあそんなわけで、

私はくつを脱いで中に上がりました。くつを脱いで。

もうこの時点から「あー、靴脱いだよ、靴」なカンジ。

ご招待会の雰囲気、丸出し。

いやその通りだったのですが。

 

その時点でちょっと思ったこと。

担当者、要するに初めてお買い物した時に出てきて対応した人、なのですが、

私の事などすっかり忘れておいででした。

呉服屋の社員として、その辺どうよ?()

因みに現在行きつけになりつつある別のチェーン店呉服屋さんでは、

一発で顔を覚えられてしまいました。

要らん事ですがこの「囲い込み」のお店のお隣です。

いけしゃあしゃあと覗いています(大笑)

 

さて、話を戻しましょう。

おにーちゃん、私が来る時間が遅いということを把握していたので、

適当に反物を見繕ってキープしておいてくれたのでした。

有り難かったです。

午後に来たって物なんかないよ、な状況だったらしいです。

私はどの道夕方にしか行けなかったので、その辺は覚悟してたし、

気に入ったものがなかったら別に貰わなくても、と思っていたのでした。

そして、反物を貰っていざ帰ろうとしたその時、

「せっかくですから、何か気に入ったものを合わせてみませんか?

前回に引き続き、また反物で「何ちゃって着物」をやろうといわれました。

ただだし、みたいに。それで私も「ただだからいいか」と思って、

ちょっとゴーヂャスな訪問着というかたれもの?みたいなのを当ててもらいました。

でも私、はんなりした色、似合わないんですよ。

上品なはんなり系、本当に似合わないんですよ。

で、そんなのを着せられてしまい、ちょっと引いていたところ、

わらわらと何人かが私の周りに集まってまいりました。

そして次々に、色んなところから色んな反物を出してくるのです。

これにもちょっと引きましたが、何しろ丸一日の労働の後です。

感覚がビミョーになっておりました。ナチュラルハイ、までは行きませんが。

「どういうものがお好みですか?」と尋ねられた私は、テンション高めにこう答えました。

「インド更紗っぽいのが欲しいんですよー。あのごてごてしたヤツ。

エキゾチックなのにそれでも「和」ってなカンジで」

 

以前この店に来た時買い損ねたのですが(てか暗に似合わないと言われた気が……)

赤字にあのごてごてぎっちりとしたインド更紗風の、

ポリエステルの着物がありました。

変り種というか渋系というか、そんなのが好きな私は、

まあ半分は「そんなんあったら出してみな」的気分でそう言ってのけました。

ないと思ったんだよ、そうもそうも。

自分好みの反物なんて。

あったとしても買う心算なんて毛頭無かったし。

然し場所は呉服屋。出て来てしまいました。

濃ゆい紫の地にインド更紗模様。加えて、

袖口は透かし織りの上、スワトウだかチワンだかの刺繍入り。

……息を飲みました。めッちゃ好みだったからです。

専門店舐めとったらあかんぜよ!とか、言われたカンジでした。

それで集まってきた店員の話が始まるわけです。

この生地はどこの物で、この染めはどういった染で、と。

あんまり覚えてませんが、疲れてハイテンションちょっとかかった私は、

その反物を着せてもらいました。

一緒に、ゴウヂャスな帯も当ててもらいました。

……うわぁ、うわぁ、うわぁぁぁぁっ。

それがもう、絶妙と言うかめっちゃツボと言うか何と言うか。

疲れもあるために過剰にアドレナリンが出て、顔が自然に笑ってしまうのです。

「うわー、ステキー。すごーい、きれーい」もう自分でも絶賛。当然向こうも、

「あらステキ」「よくお似合いですよ」「こんなのお正月に着たらいいわねえ」

とまあ、そんなこんなで戦闘は開始いたしました。

呉服屋の口説きが始まったら、そんなの後は戦いですよ、戦い。

それでもやはり私は初陣(?)敵は然る者。

いい着物着せてもらって褒めまくられて、有頂天の私に一人の店員が尋ねてきました。

「コレ、幾らだと思います?」来たよ、来た来た。問われた私はちょっとかまととぶって、

「えーッ、わかんないですぅー」とか答えました。阿呆みたいです。

120万ですよ」……え?

うっひゃーッッ。何それ。何その値段!!ひゃくにじうまんって何?

驚きましたよ、本当に。当然のように。

私は速攻で「脱がせてくれ」と頼みました。そんなの被ってて汚したら、どうなるというのだ!!

弁償しようにもしようがないじゃないかーっッッ。

然し敵のやり口は止まりません。「月々いくらで何年で払えば大丈夫」とか!!

「これ一枚あったら一生ものですよ」とか!!

「これで結婚式もお正月もお子さんの入学式も行けますよ」とか!!

口説きモード全開の上「ねー、どーしても、だめぇ?」と袖を引っ張る真似までしやがる!!

私は言いました。買えません。欲しいけど、凄くステキだけど、今は借金(奨学金)の返済もあるし、

何よりそんなものを買う余裕なんてありません!と。

この辺で浮かれていた私の気分は急降下。一気に戦闘モードです。

いやそれでも……かなりその魅力的なものに惹かれていました。

だから正直に、というのも変ですが、自分の貧乏さ加減を語りました。

いや、貧しさを語るのに嘘は要らないです()

……誇張はいるけどね。

今は絶対買えない、着るものにそんなにお金はかけられない。

結婚式にもその他の正式の場にも、着るものなら家にある。

だから脱がせてくれ!!買わないから!!欲しいけど!!

……最後の一言は余計でした。その辺りから、店員の頭数が一人増えたのです。

このお店の店長という人でした。イベントの時、呉服屋さんは大抵和服なのですが、

その人だけ一人洋服でした。関係ないか。

そして執拗にこう尋ねられました。

「もしこの着物がただで手に入ったら、あなたはこれを着ますか?

そんなの当たり前じゃん。何しに店に来たと思ってんだよ。

反物当たったから来てるんだろ。

そんな人間が、どういう経緯であれ、自分の着物作っといて、

着ないわけないじゃん!!

そんな問答が暫く続き、私はとうとう切れました。

「もう帰りますから!!これ脱がせてください!!

いやもう、自分で脱ぐ勢いでした。すると店員達は私を何とか押しとどめ、

書類を一つ持ってきたのです。

店長はそんな中、あと五分だけ、と言ってその書類を広げ、

こんな話をし始めました。

「私達としても、着物を買っても仕舞っておく方より、着て頂ける方に買って欲しいと思っています。お客様ならこの着物をお買い上げになったら絶対に着ていただけると思いますから、二千円でお譲りいたします」

……オー、ワタシ、ニホンゴワカラナーイ。

そんな気分でした。何ぃッ、二千円だとう!!何割引だ、いや待て、何でそうなるーッッ。

ゼロがいくつ消えたと思ってんだこら!!何だその値段は!!

その後店長はこう言いました。

「ただし、セットで十二万以上の帯を買っていただいたら、です。こちらも商売ですから」

……もーここまで来たら、何をされてたかは明白ですよ。もうちょっとでいい鴨でしたよ。

それでもまあ、ワタシも着物おばかさん。

その滅茶苦茶すぎる値下げにぐらぐらしながら(←この辺がおばかさん)

とてもそんなお金はありません、と言うことで断り続け、

その後もずるずる、五分どころの騒ぎでもなく口説かれまして。

 

……帰り道、私はちょっと腹立たしい気持ちで、しかしこんなことを思いながら帰りました。

「勝った!!!!

 

後日、当時呉服屋勤めの友人(今は転職してます)にこの話しをしたらば、

「それは元々十二万のセットとかで、あわよくば前振りの金額で買わされるものだ」

と言う様な事を言われました。

着物は本当に魅力的でした。でも、帯は要らないのです。

成人式の時に作ってもらった晴れ着の帯があるから。

よっぽどの事がなければそれで使えなくはないから。

そんなわけで。

 

……もちろん、買いませんでしたよ、それ。

次の日衝動に駆られて出かけるかとも、

思ったけどしなかったし。

「またきっといい着物に出会えるよ」とおかんにも慰められ(ちょっと違う)

まあでも、しょっぱなから結構なセールスに遭ったものです。

そこの店からはその後も、担当のおにーちゃんから、

ダイレクトメールや電話が来ました。然し、

「ふらっとお店に寄って気に入ったものがあったらその時は買うけど、

呼び出されてまで行きたくない。電話されても迷惑だ」と、

電話の口で言ったなら、その後一切が途切れました。

ダイレクトメールも電話も、一切が。

 

そんなわけで最近では、呉服屋さんで気軽に名前を書いたりするのを避けています。

仕立て頼んだりしたら流石に書きますが。

つーかもー、本当にしつこかったよ。

「勝った!!!!」とか、本当に思ったよ。握りこぶしで。

今もこの話をさせると握りこぶしで言います。

「勝った!!!!」「え、買っちゃったの?」「違う違う、Winner!!ってカンジよ」

いやもう何しろ、当たった反物だけはしっかりゲットしてきましたから!!

そして後日その反物を、件の友人の所で仕立てに出しました。

以来私をとっ捕まえた挙句にポリ反物を巻き上げられた(ちょっと違う)

そのお店では着物を買っていません。当たり前だけど。

然し最近当時の担当者の姿がないので(辞めたか飛ばされたか知らんけど)

また駄々安セットを求めにいこうと考えています。

性質悪いですね、にやり(¯ー¯v)

でも性質悪いのはお互い様だと思います。

世の中の呉服屋さん全てがこんなわけじゃないですが、

ちょっとこれは酷いというかしんどいと思うのです。

余所では「じゃあやめとこうか」とか、すんなり退かれるのに。

私の怖い話はこんなところです。でもこの呉服屋の友人に、

「貴女は要らない物を口説かれたくらいで買うような人じゃないから大丈夫」と、

変な太鼓判押されました。まあね。

学生の頃から人の揚げ足取りは得意だったからね。

 

因みに後日別のところで、

喪服のセールスにも遭いましたが、やはり撃退しました。

にやり。(¯ー+¯)

 

 

 

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INDEX

FUTURE

 

Last updated:2006/06/02

*・2005/06/10upしたものを修正しました。

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